最適な賃貸
収益把握が比較的難しいとされるもの、あるいは現状の利用が必ずしも経済的に妥当ではなく、用途転換を前提として考える必要があるケースをいわば「特殊な類型」の不動産評価の考え方として整理してみた。
取り上げたものは以下のものである。
なお、これらの不動産は個別性が強いので、一律な判断はなかなか難しい。
不明な点は不動産鑑定士を含めた専門家にご相談されることをお薦めしたい。
したがって具体的な事案をご説明するよりは、考え方の整理を行ったものとお考え頂きたい。
不良債権の担保不動産調査で全国を歩いていると、産業構造の変化や不況により閉鎖してしまった工場をよく見かける。
このような閉鎖工場の行く末を追うと、その属する地域にもよるが、特に大都市圏では閉鎖した工場を用途変更せず工場として第三者が取得することは少なく、用途がマンションやショッピングセンター等に変わるケースがほとんどである。
しかし工場跡地のすべてが用途転換できるとは限らない。
都市計画法をはじめとする公法上の規制や周辺を取り巻く立地・商圏によってその転換可能性や内容が決まって来ることが多い。
ここ数年、環境に対する目が厳しくなり、ダイオキシンやPCBなどに汚染された土地は取引の対象にさえならなくなってきている。
このようなものは土壌改良や土壌の入れ替えなどの処理後でなければ見向きもされない。
ここでは、用途転換の可能性を検討しつつ、この閉鎖した工場の不動産としての価値についての考え方を整理してみたい。
前提条件としてのゴーイング・コンサーン(GoingConcern)とそもそも工場の価値を評価するにあたっては、まずその評価前提にゴーイング・コンサーン(将来価値)であるか、閉鎖(清算価値)を前提とするかにより大きな違いが生じる。
本来、工場も生産により収益を上げているわけだから、収益物件と考え収益還元法を中心に価値を求めるべきとも考えられる。
これは、工場が今後の生産活動を継続するというゴーイング・コンサーンを前提として考えた場合である。
反対に、スクラップ、すなわち閉鎖を前提とした場合は、工場の収益性を前提と考えるのではなく、むしろ用途転換を前提として考える方が現実的と考えられる。
ちなみに、工場不動産に対する収益還元法の適用においては、工場を第三者に賃貸することを想定し、その賃料に基づき収益を査定する手法が多く採られている。
しかし、工業用不動産は住居用や商業用不動産とは異なり賃貸の例が少なく、賃料水準の把握が困難と言え、この評価手法が果たして現実的な手法かどうかというと疑問である。
ゴーイング・コンサーンを前提とする評価手法工場が今後も事業を継続することを前提として考えた場合、工場も収益物件であるからその生産活動から生み出される収益をベースに収益還元法を適用することが妥当と考えられる。
しかし、不動産鑑定評価の現場を見ると、ほとんどの場合、「積算法」による評価を中心として鑑定評価額を決定しているのが実状である。
金融機関の担保評価等では、敷地の価格を相続税路線価や地価公示・基準地の価格から求め、これに建物の価格を加算しているケースが多い。
また、財団を組成している工場の場合には機械・工作物・構築物の価格も簿価に一定の掛け目を乗じているものの、積算して求めているのがほとんどと思われる。
しかし、実際に担保権を実行する場合は、スクラップを前提とするケースの方が多い。
いざ担保処分となると、この積算して求めた担保評価額では売却はまず有り得ないと考えられるためである。
このギャップをどう埋めるべきであろうか。
特に、機械などは陳腐化による価値の減少に加えてセカンダリーマーケット(流通市場)がないという問題もあり、実務としては、その内容を詳細に吟味してからの作業となる。
スクラップを前提とする評価では、工場が閉鎖してしまったケース、あるいは現況は稼動中であるが閉鎖を前提として評価する場合はどのように考えるべきであろうか。
まず、基本的な考え方は、工場の閉鎖後に同業者がそのまま工場施設を使うことがないと考えられる場合は、工場跡地の更地としての価格から、更地化に要するコスト(建物の取壊し費用・機械の撤去)を求め、これを控除して求めることとなる。
なお工場の場合、地面にさまざまな施設が埋められていることもあるので、これらの撤去も考えなければならない。
また土壌汚染調査も前提となる。
閉鎖後、PCBや六価クロムなどの汚染が発覚すると、そもそもの取引対象から外れることも少なくない。
マンションの敷地や大規模のショッピングセンターに転換されることがあるが、その場合は当然にして更地化に要するコストは現所有者負担となる。
そもそも、工業用地の地価水準は住宅地の70%以下、商業地から見ると50%以下というのが相場であることから、建物等の撤去費用がかかったとしても事業継続を前提とした工場の価額よりも、更地としての価額の方が高いということが起こり得る。
特に、工場の創業時点から数十年を経たものが多く、高度成長期以前からある工場等は当然にしてその周辺地域の環境と工業立地の変化から、工場として運営することが最有効使用ではないケースが多くなっている。
埼玉県川口市の古くからの鋳物工場跡地が、東京へのアクセス性の良さからマンションになるケース、大規模な紡績工場跡地が背後人口の増加や付近に国道バイパスが開通するなどの要因から大規模ショッピングセンターになる、といったものは典型例である。
一方で、地場産業の衰退による工場閉鎖の場合に、地域自体も衰退傾向または衰退してしまったケースの場合は用途転換の可能性そのものが低く、工場閉鎖のようなケースの工場跡地の時価はきわめて低くならざるを得ない。
では、閉鎖した工場の価値をどのように考えたらよいのだろうか。
まず、その土地を今後も工場の敷地として利用することが妥当か、用途転換を前提と考えるのが妥当かの大きく2つに分類する。
この際、特に用途転換を考える上で公法上の規制や転換後の用途の市場性を十分に検討する必要がある。
公法上の規制であるが、都市計画区域内に所在する不動産で用途地域が工業専用地域に指定されているものや、工業団地内に所在するもので団地分譲時に工場以外の利用を制限している場合には住宅等の他の用途への転用は考えられないので注意を要する。
市街化調整区域に所在する工場については、後述する回市街化調整区域に所在する物件を参考にして頂きたい。
かつては既存宅地に該当すると住宅団地に変ぼうするものもあったが、法改正で微妙となっているので注意を要する。
市街化区域に所在する工場については、【工場跡地の評価の考え方】のフローチャートを参考にして用途転換の可能性を判断して頂きたい。
用途転換後に考えられる最有効使用には、物流倉庫・マンション・戸建分譲。
ロードサイド商業施設・大規模商業施設といったものが挙げられる。
それぞれのポイントは次の通りである。
物流倉庫が最有効と考える場合主要交通機関への接続性がポイントとなる。
・幹線道路やインターチェンジ・空港・港湾への接続性・前面道路の幅員が最大のポイントとなる。
最低8m、できれば12mの幅員が必要。
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